「笑みたわわ」誕生ヒストリー小麦にも負けない米粉を作ればいいじゃないか
小麦に代わりうる米粉の開発は、米の品種開発からはじまります。「小麦アレルギーで好きなパンや菓子を食べられない子どもたちがいるのです。さらに日本に比べて世界では小麦文化が主流。グルテンアレルギーはもっと深刻な問題なのです。私たちができることは何かないのか。おいしくて安心して食べられるパンを届けたい。それなら小麦に代わるお米を作ればいいじゃないか。有機農法で作ったお米で米粉100%のパンを作ると決意しました。」米粉パンは市場に出回っていますが、米粉100%となると話は変わってきます。米粉を使用するとボソボソした食感や味の面でも小麦パンに劣ってしまう。それでは意味がないと米粉のための新種米開発からはじめました。目標はまるで小麦で作ったかのようなパン。これまで有機農法で米づくりに取り組んできた兵四郎ファームの新たなチャレンジ、米づくりの次のステップに挑みます。
兵四郎ファームから「笑みたわわ」誕生!
平成27年、農研機構との共同開発で研究段階にあった「羽919」という品種改良に着手します。まずはこのお米の性格を知ることからはじめました。「収穫1年目から羽919には他のお米にはない粘性・膨らみ・おいしさがあることがわかったのです。元々加工米に適した新種でしたが、保湿性という特徴は小麦にも劣らない、独自の特性に皆が驚きました。これはできる!という可能性も感じました。」翌年には「西海307号」へと名称を更新し、その後も改良を重ね続け、令和元年10月に農水省の品種申請の受理のもと「笑みたわわ」が誕生しました。小麦にも負けないふっくら感とお米ならではの甘みともっちり感が味わえるハイブリットな米粉専用米。農薬・化学肥料一切不使用の安心でおいしいお米で、笑みがたわわに実りますように。そんな想いも込められた新品種です。
米粉の製粉にもとことんこだわります
兵四郎の米粉パンケーキや米粉パン粉は、鹿児島に本社をおく小城製粉株式会社にて製粉されています。鹿児島の郷土菓子に使われるかるかん粉をはじめ、多品種の米粉を扱っており、高い製粉技術とノウハウを有する製粉会社です。「私たちの工場は“非効率”です。」製粉会社の小城さんは語ります。「一般的な製粉工場では効率を上げるために数十トンもの量を一日で製粉します。しかし小城製粉ではあえて“非効率”であることを選びます。多種多様なニーズに合わせた製粉方法で製粉した米粉をブレンドしカスタマイズすることで商品に最適な米粉を提供。あらゆる要望に応えるうちに製粉機の種類数は業界トップクラスに。お米にも性格があります。同じお米でも製粉機を変えると特性が変わってくる。この米粉が何になるのかを念頭に置いて製粉方法や配合も吟味します。」
「笑みたわわ」には数値では表せないおいしさがある
「これまでたくさんのお米を製粉してきましたが、笑みたわわは製粉しやすいお米です。でんぷん質が柔らかいのでザラつきが少なく米粉に適しています。そして他のお米に比べておいしさが明らかに違うのです。数値では表せないおいしさが笑みたわわにはあります。」各地で生産された米を製粉する小城製粉では毎日製粉機の清掃をすることで、他品種と混ざらない製粉を行っています。有機で育った「笑みたわわ」も同様に、他と混ざることなくアレルギーにも配慮した製粉で米粉へとかたちを変えます。さらに小城製粉はドイツにも販売会社を構え、米粉の世界展開にも積極的に取り組んでいます。グルテンフリーにかける想いは兵四郎ファームとも重なる共通点。米粉100%で作るおいしいパンづくりも共同開発しています。
7年の歳月をかけて誕生した米粉100%パン
粘性・膨らみ・保湿性に加え他にはないおいしさ。「笑みたわわ」の持つ特性を最大限に生かした米粉パンづくりは、研究と試作の連続。小麦で作るパンを目指すほど課題は多く、苦戦する日々でした。そして令和3年、あらゆる試作パターンから”米粉パン”として最高の仕上がり具合となる配合を発見しました。
新種米開発から7年の歳月をかけてやっとたどり着いた小麦にも劣らない米粉パン。「主食でもあるパンは毎日食べたいほどおいしいものでないといけない。だからこそ道のりは長かった。試作を重ねて完成したパンは本当においしかった。目指したのは小麦で作ったようなパンでしたが、お米の甘みも感じられるこのパンは小麦を超える米粉パンだと自信を持って言えます。」味はもちろん、有機農法という安心の付加価値もこのパンの自慢です。小麦の代用にもなる米粉はこれからの食糧難に、自然に配慮した有機農法は環境問題の改善に。たくさんのこだわりと想いが詰まった米粉100%のパンをぜひ一度ご賞味ください。